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No.104 「昨シーズン冬の貴重な経験」

札幌石狩支部 小山奈緒美

 長きに渡り、耳の不調に悩まされていましたが、一昨年に正式な病状がわかり、日程調整の結果、昨年末に手術をすることになりました。

 手術は、昼1時開始予定だったため、朝食以降は絶食となり、術後も簡易的な術後食となると説明を受けました。麻酔で寝ているうちに手術は終わりましたが、術後は、痛みと麻酔のだるさ、そして何より尿道カテーテルの強い不快感により、術後食もお断りして、ただ目を閉じてやり過ごすのが精いっぱいでした。

 翌朝、尿道カテーテルも抜去されて、不快感が和らぎ、麻酔の余韻も抜けたころ、術後最初の食事が運ばれてきました。やっと食事が食べられる!と、期待を込めてお膳のふたを開けると、そこにはおかゆを中心とした形態調整食が並んでいました。安全性の面ではありがたい配慮であると理解しながらも、もともとおかゆが苦手だった私にとっては、少々気持ちが沈む内容でした。加えて、おかずも独特のテクスチャーで、楽しみにしていた食事が一気にトーンダウン。空腹とは裏腹になかなか食が進まず、気づけば食事の時間が少し憂うつになっていました。(とはいえ、貴重な経験と思い、食事の写真だけはしっかりと撮影)

 翌朝、あまり食が進まない私に、看護師さんから「このまま食事が進まないようだと、年末の退院が難しくなるかもしれませんよ」と、やさしくも現実的な一言をかけられました。年末年始は家族と自宅で迎えたい一心で、私はおかゆが苦手であることを正直に伝え、少しでも食が進むようにと常食への変更が可能かを尋ねたところ、意外にも次の食事から対応可能と返答をいただき、次の食事が楽しみで仕方なくなりました。

 ところが、その期待はすぐに試練へと変わりました。白米を口に入れようとすると、痛みのため思うように口が開かず、やっとの思いで口に入れ咀嚼してみると、耳のみならず、頭頂部にまで響き渡る激痛。形態調整食では思うように噛むことができないことに気づいておらず、常食になって、“術後で噛めない”という現実を痛感することに。食事を摂るうえで、「噛めること」を意識したことのなかった私にとって、この現実は大きな衝撃でした。食べたいのに食べられないとは。

 やっとの思いで大晦日に退院し、おせちも食べられない年始を迎えることになりました。
「噛めること」がどれほど尊く、食の満足感や安全性に深く関わっているかを、身をもって実感した昨シーズン冬の貴重な経験でした。

本文ここまで

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