第3セッション
演題 1
「血液透析患者の運動・栄養療法の実践」
自己効力感が得られた一例
発表者 ○衣斐美稚子1) 澤岡清美1) 山口朋美1) 高橋とわ子1) 岩本匡古1) 尾関香苗1) 松本倫明2)
(王子総合病院栄養管理科1) 血液浄化室主任科長2)
[はじめに]現在26万人といわれる人工透析患者。毎年3万7千人が人工透析患者となり、今や特殊な病ではなくなりつつある。合わせて透析医療、技術は進歩しているが、食生活や病気に対する理解と前向きな生き方が必要なことは変わらない。当院の血液透析患者の平均年齢は60.1歳で、34歳女性〜89歳男性まで、高齢化に関する悩みや透析生活の難しさを抱えている。その中で透析歴8年目の74歳男性の「何故私は透析をしなければならないのだ!」という辛い心境から「できるだけ筋肉を動かし、食事も大切にしないといけない」という自己効力感を得た一例を報告する。[方法]透析間体重増加率、血圧の変化、ドライウエイトの変化、栄養指標となる総タンパク・血清アルブミン・血清クレアチニン・カリウム・リン値を評価し体調改善が図れた要因を考えた。[結果]2003年の体重増加率は1.75%〜4.35%とバラつきがあるが2006年は2.97%〜3.65%と安定している。特に冬期に室内筋肉トレーニングやウォーキングを行い夏期と変わらない。体重増加率の変化と血圧の変動についての相関は色々な要因が考えられ明確ではない。総タンパクは2003年、平均6.6g/dl,2006年は平均7.1g/dl。血清アルブミン2003年は4.1g/dl,2006年は3.8g/dlで栄養状態に大きな変化はない。K値は2003年9月7.2mEq/lから2006年9月5.7mEq/lへ低下、透析間体重増加率の目標値の継続と汗腺機能の復活が運動の効果と思われる[考察]人工透析の導入後、心身共に厳しい状況があったが、家族や友人・病院スタッフとの関わりの中で筋肉を動かすことを意識し運動することが生きがいや快適な生活につながり、食事も自分の主張で行うことができ、満足感が得られた。事例を通し、限られた水分量やリン・カリウムなどの栄養素の話を伝えて終わる栄養指導から、その人に合った運動・栄養療法を一緒にみつけることが本来の役割だと感じた。
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