第2セッション
演題 3
老人保健施設における治療食について〜蛋白質制限食〜
発表者 ○荒井幸江1) 、江村智子2)、氏家志乃2)
(介護老人保健施設 北星館栄養科1) 、医療法人社団いずみ会 北星病院栄養科2)
【目的】慢性腎不全では蛋白質制限食が腎機能低下抑制において有効である。当施設では蛋白質調整食品を使用した治療食を提供しているが、喫食者の食事摂取量の低下や蛋白質調整食品への拒否が見られた。対象者の摂取状況の改善を目的とし、食事の調整及び検討を行なった。【方法】対象者は蛋白質制限食摂取者3名で女性87±5.0歳、原疾患は糖尿性腎症2名、腎硬化症1名、慢性腎臓病のステージは全てステージ4であった。施設提供食事の摂取状況の観察、施設提供食以外の間食の調査を行なった。【結果】治療食の提供エネルギー量の平均は1267±115kcal、提供蛋白質量は0.73±0.08g/kgであり、摂取エネルギー量の平均は1181±203kcal、摂取蛋白質量の平均は0.66±0.10g/kgであった。食事摂取量6割程度と少なかった対象者では調整を行なうことにより、1割程度の摂取量増加が見られた。蛋白質調整食品の拒否があった対象者では、治療食の認識が曖昧であり、他者と異なる内容への不満や施設提供食以外の間食摂取が多かった。治療食の必要性について栄養相談の実施と食事の調整により、施設外間食量が減少した。食事調整後、腎機能悪化の傾向は見られなかった。【考察・結語】間食の多量摂取及び家族からの差し入れ等は、治療食の必要性に対する理解が影響していると考えられた。老人保健施設が生活の場であり、病院のような治療の場ではないことから、本人及び家族の治療食の必要性に対する理解及び動機づけが困難であるが、治療食への理解を深めることを目的とした栄養相談の実施が、動機づけとなることから、継続した栄養相談による対象者との関わりが必要であると考えられた。また治療食の摂取が腎機能悪化抑制に寄与するだけではなく、身体機能及びQOL低下抑制にも寄与すると考えられることから、摂取量低下を招かないよう食事の調整を行なっていきたい。
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