第6セッション
演題 1
健常者における梅酒飲用の血圧と血清脂質に対する効果
発表者 ◯吉川賢太郎1)、撫井賀代2)、福本紘一1)、島田豊治1)
(近畿大学食品栄養学科1)、大阪市西成区役所保健福祉センター2)
[目的]梅果実は、梅干しなどの日本独特の食品に加工され、保存食品としてばかりでなく、いわゆる健康食品や薬用として利用されている。とくに梅果実を焼酎に漬け込む梅酒は果実、種子中の成分がアルコールによって抽出されている利点がある。その効能は,いずれも経験的なものが多く、栄養疫学的に報告されたものは少ない。本調査は市販梅酒を健常者に飲用させ経過観察し、血圧及び血清脂質に与える効果を検討した。
[方法]月1回の検診毎に市販梅酒(C社製, Excellent) 750Mℓ(アルコール14 %、糖20 %、 梅エキス30 %含有)入り瓶詰めを各被験者に4〜5本配布し、毎日梅酒約100Mℓを12ヶ月間自由に飲用させた。また、市販梅酒飲用終了後の6ヶ月さらに観察した。実施期間中は食事、運動、喫煙、飲酒等とくに制限しなかった。飲用1ヶ月後から毎月1回身長、体重、血圧の測定と採血および検尿を行った。飲用開始日も同様の検査を実施し、飲用前値とした。調査前3ヶ月間の血圧、肝機能、腎機能等に異常がないボランティアのうち12ヶ月間継続飲用、飲用停止6ヶ月観察できた30〜50歳代の被験者5名(年齢, 平均値±標準偏差, 36.2±13.5)を解析の対象とした。
[結果]収縮期血圧の測定結果は、3ヶ月後から低下傾向を示し、飲用10ヶ月後は、飲用前値と比較すると有意な低下がみられた。その後、飲用停止後から上昇がみられ、停止3ヶ月後に飲用前値とほぼ同程度となった。T-CHO値は、梅酒飲用後やや上昇傾向を示したが、12ヶ月の飲用期間中には有意の変化は認められなかった。また、飲用停止後6ヶ月間にも変化がなかった。HDL-C値は、飲用1ヶ月後から増加傾向を示し、5ヶ月後に有意の増加が認められた。7ヶ月後から11ヶ月までほぼ一定状態を保った。飲用停止後から低下傾向を示し、飲用停止3ヶ月後に飲用前とほぼ同値まで低下した。
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