第6セッション
演題 2
クロテッド・クリームの調理に関する研究
発表者 ○菊地 和美
(酪農大酪農)
【目的】クロテッド・クリーム(clotted cream)は乳類の保存・加工品としてヨーロッパの食文化では古い歴史を持ち、生活の中に取り入れられているが、わが国では、クロテッド・クリームはスコーンを食べる時に用いることが多い。このクロテッド・クリームは冷凍すると固まってしまうが、室温では軟らかく、口溶けがよいことが知られている。本研究では、クロテッド・クリームの調理特性を検討したので報告する。
【方法】試料はびん詰の英国産市販クロテッド・クリーム(乳脂肪分47%)を用い、顕微鏡観察、色調,動的粘弾性やDSCおよび官能検査を行った。クロテッド・クリームの比較としては、市販のホイップ用クリーム(乳脂肪分47%)を用いた。
【結果】1.クロテッド・クリームの顕微鏡観察による微細構造は、脂肪球が密集しており、気泡が観察されなかった。一方、ホイップ用クリームは、脂肪球が分散しており、気泡も観察された。2.色調ではクロテッド・クリームは黄色を示すb*値や彩度がホイップ用クリームに比べて、高かった。3.動的粘弾性では弾性要素を示す貯蔵弾性率G’値が10℃付近では103Pa 、30℃付近になると102Pa付近に低下し、温度依存性がみられた。ホイップ用クリームではG’値が20℃付近までは比較的安定性を示していた。クロテッド・クリームのTanδはホイップ用クリームよりも大きくなったことから、粘性要素>弾性要素も推察される。4.DSC曲線では、第1ピークは15〜20℃付近にみられ、動的粘弾性結果とも一致する.吸熱開始温度は5℃付近にみられた。また、クロテッド・クリームは冷凍後に解凍すると離水がみられており、冷凍による構造の変化が著しかった。5.官能検査では、外観、風味、食感、色が好ましく、総合評価に関する項目が高かった。以上より、クロテッド・クリームの特性を活かして、バターやホイップ用クリームの代わりに利用する可能性が示唆される。
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