第5セッション
演題 3
当院の褥瘡対策チームにおける管理栄養士の役割
―急性期病院の栄養士の立場から−
発表者 ○高畑悠子、山賀由佳子、安川絵理、氏家真梨、佐々木宏美、三岩富美恵
(JA北海道厚生連札幌厚生病院栄養科)
【はじめに】当院の褥瘡発生率は全患者の1%を下回っているが、持ち込み褥瘡も含め毎年100件程度の褥瘡が発生している。今年の4月より、褥瘡対策チームに管理栄養士も加わり、医師・WOC認定看護と共に週1回の褥瘡回診を行っている。
当院のNSTは準備段階であり、なかなか進行しにくい状況である。管理栄養士がチームで行う回診に加わったのは褥瘡回診がはじめてのことであり、私達は褥瘡対策チームでの活動を通して、当院におけるNST活動のありかたを模索することができたように思う。ここでは褥瘡回診で関わった症例の一つを発表する。
【症例】86歳男性。前立腺ガン(骨転移)治療目的で入院。当院で背部U度の褥瘡を発生。
食事は好きなものにしか手をつけないため、日によって摂食量にばらつきがみられる。そこで本人の希望に沿うように食事内容を一部変更することで、摂取エネルギーをアップすることができた。Alb値は、介入前は2.5g/dlであったのが約1ヵ月後には2.9g/dlまで改善され、褥瘡も治癒した。しかしその後、全身状態が悪化して食欲も低下し、褥瘡再発となった。栄養面からの褥瘡予防に限界を感じた例である。
【考察】当院のような急性期病院の褥瘡患者は、ほとんどが癌患者であり、ターミナル期患者も多い。(癌患者でない例では、自宅や他院で発症した持ち込み褥瘡である。)癌患者、特にターミナル期患者においては、私たちの介入で、栄養状態の改善や、疾患の治癒などの目に見える効果は期待しにくい。そのような例では、褥瘡のケアというよりは、「食べたいもの・食べられるものを提供する」方法で行う、病気の緩和ケアという目的での関わりになってくる。これは、今後NSTとして介入する症例においても同様ではないかと推察される。
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