第9セッション演題 1

野生エゾシカ肉の一般成分と脂質成分について

発表者 ○岡本匡代、坂田澄雄、(釧路短期大学)
丹治幹男、木下幹朗、大西正男(帯広畜産大学・生資科)
【目的】 エゾシカ(Cervus nippon yezoensis)は、近年、北海道東部を中心に爆発的に増 加した。これらが牧草地や天然林などに及ぼす食害は、下降傾向にある現在において も数十億円に達する。北海道が個体数管理を目的に策定した保護管理計画に基づき捕 獲される個体数は、毎年数万頭に及ぶ。しかし、そのほとんどは一般廃棄物として処 理されているのが現状で、資源が有効に活用されているとは言い難い。そこで、野生 エゾシカ肉に含まれる栄養成分にかかわる基礎的知見の集積を目的とし、春季から秋 季にかけて捕獲したものの一般成分と脂質成分について精査したので、一般的な畜肉 と比較し報告する。
【方法】

検体としたエゾシカ11頭のロース肉は、2001年5月、8月、11月に 猟に同行して得た。個体の射殺は銅弾によった。肉は冷凍保存し、分析直前に流水で 解凍したものを挽き供試した。一般成分分析は常法によった。脂肪酸成分分析に際し ては、脂質を常法によりメタノリシスし、キャピラリーカラムを用いたガスクロマト グラフィーにより分析した。

【結果】
一般成分は、水分72.6±1.6%、たんぱく質24.8±1.2%、脂質1.4±1.1%、 灰分1.2±0.1%となり、高たんぱく低脂質であることが確認された。また、5月から 8月にかけてたんぱく質と脂質の割合が増加する傾向が認められた。
 主要脂肪酸は、いずれの季節においてもパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸 およびリノール酸であり、この特徴はウシやブタ肉と共通していたが、多価不飽和脂 肪酸は比較的多く含まれていることが明らかになった。
 11頭の構成脂肪酸を季節間で比較すると、多価不飽和脂肪酸の割合は5月の試料 において高かった。また、8月には幼獣と成獣との間で違いが認められた。
 機能性脂質として注目される共役リノール酸(CLA)量は1.2〜4.6mg/g fatであった。
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