第9セッション演題 2

DFAIII摂取によるCa吸収亢進における大腸の寄与

発表者 ○天野みどり、峯尾仁(ノースティック財団)、浅野行蔵、原博(北海道大学院農学研究科)
【目的】 Difructose AnhydrideIII(DFAIII)は、2分子のフルクトースが2つのグルコシド結合により環状構造を形成した難消化性糖質である。我々は、ラットを用いたこれまでの研究で、DFAIIIは小腸と大腸両方で、強力なCa吸収促進作用を示すこと、また、吸収促進に細胞間経路が関与することを明らかにしてきた。しかし、DFAIIIを長期摂取した時のCa吸収活性の適応は明らかではない。そこで、ラットにDFAIIIを2週間摂取させ、小腸と大腸の粘膜組織のCa吸収機能、盲腸内容物中の有機酸濃度(SCFA)、盲腸の形態の変化について検討した。
【方法】

SD系雄ラットを(6週齢、16匹)2飼料群に分け、基本飼料に8%セルロースを添加した飼料(対照食群)、または5%セルロース+3%DFAIIIを添加した飼料(DFAIII食群)を摂取させた。2週間目に小腸、盲腸および結腸を摘出し、腸管重量の測定後、3つの部位より作製した腸管粘膜標本をUssingチャンバーにマウントした。Ca濃度は生理的濃度を考慮し、粘膜側を10mM、漿膜側を1.25mMとし、2つの飼料群のラットの小腸、盲腸および結腸粘膜のCa吸収速度を測定した。さらに粘膜側には細胞間経路の透過マーカーであるLucifer Yellow(LY)を21.8μMの濃度で添加し、Ca吸収経路の特定を行なった。

【結果】
DFAIII食群の盲腸重量は、対照食群より増加したが、小腸と結腸には差はなかった。それぞれの部位の粘膜標本におけるCa吸収速度を測定したところ、盲腸でのみ対照食群に比較しDFAIII食群の粘膜の単位面積当たりの吸収速度が増加していた。いずれの部位でもCa吸収速度とLYの透過速度には有意な正の相関が得られた。DFAIII群では微生物発酵により盲腸内容物中のSCFA濃度の増加、粘膜の単位面積当たりのヒダの増加と粘膜細胞の増殖によるクリプトの長大化が生じ、その吸収面積が増大する。以上のことが、DFAIIIによるCa吸収の亢進に寄与していることが示唆される。
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