第1セッション演題 4

保冷・加熱一体型カートにおける加熱時冷菜温度管理のための
トレイカバーの考案と効果

発表者 佐藤節子、○豊岡千晶、新井田洋子(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科)
【目的】 最近導入が進む、運搬に便利な小型の保冷・加熱一体型カートは、食品とカ ート庫内の冷却が不十分な状態で加熱した場合、冷菜温度の上昇が顕著となる問題が 指摘されている。問題の臨床的意義は、特にゼラチン食品の冷温とテクスチャーが嚥 下困難者の嚥下反射誘発に効果があるとされるにもかかわらず、再加熱中に溶解が起 こり治療食としての機能が薄れること、また衛生的意義は、温度管理体制構築の上で 阻害因子となる側面があること等である。本研究では、今後このような一体型カート の活用が増加するとの考えから、より適切な温度管理の実現をめざして冷菜温度の挙 動を明らかにし、温度上昇を抑制するためのトレイカバーを考案してその効果を計る こととした。
【方法】

収納トレイ数22枚のAGP社のEH式カート(ピッチ:75mm)に付属す る食器カバーの代替として、硬質発泡スチロール板を材料にトレイカバーを試作した。 食品4種類(カレー、洗米、牛乳、コーヒーゼリー)を載せたトレイにすべて食器カ バーあるいはトレイカバーをかぶせて、冷蔵中のカートに搭載し、庫内温度調節を行 った上で加熱する工程を計6回実施、各回加熱中のカート庫内温度変化と加熱前後の 食品温度をモニターした。またトレイカバーの作業性を明らかにするため、一定の速 さに設定したベルトコンベアで配膳を行い、1分当たりの配膳トレイ数を比較した。

【結果】
冷菜温度基準逸脱率は、(1)カート庫内温度0℃未満において、食器カバー( Pc)に比較してトレイカバー(Tc)の値が4分の1、庫内温度7.4℃においてはト レイカバーが6分の1、(2)庫内温度がほぼ同等の時、トレイカバー最初の試作品(Tc- A) に比較して改善後の試作品(Tc-B)が2分の1の値を示した。また、(3)使い捨て 食器は短時間の加熱で済み、逸脱率が最小であった。両カバー間での配膳トレイ数に 差はなかった。
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