第3セッション
演題 3
食道および胃切除手術に伴う腸内細菌叢の測定の試み
発表者 ○オンゴール・マーチン1)、大内一智2)、鶴丸昌彦2)、浅野行蔵1)
(北海道大学大学院農学研究院1)、順天堂大学医学部上部消化管外科2)
【目的】腸内細菌とは、通常大腸に生息する微生物を指しており、糞便サンプルによって調べる。食道や胃の切除手術では、物理的には大腸には影響を与えないはずであるが、大腸での異常発酵などを起こす患者がいることが知られている。近年、腸内細菌の調査法は、培養法からDNA抽出による遺伝子的な方法へと進展している。著者らは、食道ガンや胃ガンで患部を摘出手術した患者の糞便サンプルからDNAを抽出して、腸内細菌叢の状態を調べる試みを行ったので報告する。
【方法】通常の検便の方法で糞便サンプルを被験者から採集した。サンプルは、冷蔵し1日以内に冷凍して輸送し、-80℃で使用まで保存した。約0.1gの糞便サンプルを1mlのTE緩衝液(pH8)で4回洗浄した後、同緩衝液1mlに懸濁し、終濃度2.5mg/mlでリゾチームを30μg/mlでアセチルムラミダーゼを添加して、37℃15分反応させた。DNA抽出は、Soil DNA Kit (Mo Bio Lab. USA)で行った。抽出したDNAを鋳型として、PCRで微生物の16SリボゾームRNA遺伝子のV3領域の約180塩基を増幅した。PCR産物をエタノール沈殿させ、10μlの精製水で溶かして、DGGE(変性剤濃度勾配電気泳動法)は、65V、60℃、14時間で行った。泳動後ゲルは、SYBAE Greenで染めてDNAバンドを撮影した。DNAバンドは、紫外線下でカミソリで切り出し、直接PCRを行った後3100 Genetic Analyzer(Applied Bioscience)で塩基配列を読み、Gene BankでBLAST検索をして微生物種を同定した。
【結果】30名のサンプルを分析した。数例でDGGE法の結果が薄く不明瞭であったほかは、明瞭なバンドとして検出できた。患者それぞれで微生物叢は大きく異なっていた。食道ガン患者で、術後Lactobacillus属菌が増加したり、Ruminococcus属菌の増加、あるいは、Bifidobacterium属菌の増加した患者、他方、減少した患者もあり、統一的ではなかったが、いずれの患者も術前術後で腸内細菌叢は大きく変化していた。
【考察】本法で腸内細菌の大きな変化をとらえられたので、さらに症例を増やして問題点を明らかにしてゆく。
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