第7セッション
演題 3
脂溶性抗酸化物質の吸収に対するリン脂質の作用
発表者 ○西向 めぐみ(北大・創成科学研究機構)、原 博(北大院・農・応用生命科学)
[目的]これまで、通常摂取するより高レベルのレシチン(大豆精製ホスファチジルコリン)を含有した大豆油の経腸投与において、リンパへのトリグリセリド(TG)放出速度がレシチン無添加油に比べて高いことを示した。この結果は、他の脂溶性成分の吸収も上げる可能性を示している。今回は、これまで用いてきたレシチン含有脂質に脂溶性抗酸化物質であるリコペン(LY)とα-トコフェロール(α-Toc)を混合し、ラットに投与、これら脂溶性成分の吸収に対するレシチン添加の影響を検討した。
[方法]Wistar系ラットの十二指腸と胸管リンパに、それぞれ脂質投与用とリンパ液採取用カテーテルを留置した。一夜回復後、1ml中に、以下の試験脂質を含むエマルジョンを投与した。(1)SO:113μmol大豆油、(2)SPC:82.5μmo大豆油 + 30.5μmo大豆ホスファチジルコリン、(3)EPC:82.5μmol大豆油+ 30.5μmol卵黄ホスファチジルコリン。実験1では、これらのエマルジョンに4.6μmolα-Tocと0.372μmol LY、実験2ではLYのみ、実験3ではα-Tocのみを加えた。リンパ液の採取は投与後4時間まで行い、分析はリンパ中のTG、PL、LY、α-Toc量を測定した。 [結果]実験1において、リンパへのTG放出量はレシチン含有脂質で、より高かった。LYのリンパへの放出量は、両レシチン含有脂質投与でレシチン無添加に比べ有意に上昇したが、SPCの方がより高い値をとった。一方、α-Tocは逆にレシチンが共存するとリンパへの放出が低下した。LY、あるいはα-Toc単独で添加した場合(実験2・3)も同様の結果を得た。以上、レシチン含有脂質との同時投与により、LYは上昇、α-Tocの吸収は低下した。この結果はTGのリンパ放出が促進されている状態で、他の脂溶性成分のリンパ放出が必ずしも促進されるものではないことを示している。
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