演題 11 小学生の不定愁訴の状況とそれに関連する生活習慣上の要因
               山際睦子(元町小)、大滝裕子(大谷地小)、栗原絹子(緑丘小)
             三塚真里子(手稲中央小)、○向井ひとみ(北園小)、高橋朗子(澄川南小)
             神谷美千子(手稲山口小)、岡野五郎(札幌医大)
【目的】


 近年、社会環境や生活様式の大きな変貌に伴い、児童生徒の健康が蝕まれているとの指摘がある。不定愁訴は、児童においても重要な健康指標として多くの研究で用いられ、その実態が報告されてきた。しかし、生活習慣上のどの要因が愁訴の発生と強く関連するかの検討は少ない。本研究の主目的は、この点に検討を加えることにある。
【方法】



 対象は、小学校5,6年生の男子401名、女子363名である。自記式調査表で、形態、食生活、運動、休養ならびに不定愁訴に関する状況を調査した。愁訴項目は、産業疲労の「自覚症状調べ」の項目より選び(21項目)、「よくある」(3点)、「時々」(2点)、「ない」(1点)の3選択とした。集計ではそれらの分布を示すと共に、21項目をあわせた総得点を算出し、5分位数により5段階にランクづけした。さらにχ2独立性の検定により、愁訴と有意に関連する生活習慣上の要因を探索した。
【結果】




 不定愁訴項目のうち、「よくある」の割合が男女とも高かった項目は、「眠い」、「目が疲れる」、「横になり休みたい」、「イライラする」、「大声を出したり、暴れ回りたい」であった。加えて、男子では「夜、眠れない」、女子では「急に立つとフラフラする」であった。また、愁訴と有意に相関する項目は、女子では「体重をどうしたいか」、「夕食の時刻」、「食事の楽しさ」、「ダイエット」、「就寝時刻」、「テレビ視聴時間」、「悩み、心配事」であり、男子ではこれら加え、「夜の間食」、「清涼飲料の摂取」などであった。しかし、身体運動に関する項目と愁訴状況の間には、有意な相関がみられなかった。
【考察】




 愁訴と運動の間には有意な関係がないが、これは小学生では体育があること、また頻度の差はあるが課外での身体活動もあること−などによると思われる。これに対して、小学生は生育過程にあるため、栄養の充足は不可欠であること、また精神的未熟さゆえにストレスにも弱いこと、これらが愁訴状況と栄養、精神の項目とに有意な関係を示した原因と考えられる。しかし、本研究での相関分析は、2変量間(愁訴vs.各生活要因)のものであり、各生活要因を調整した多変量解析が今後必要である。