平成19年度 春期研修会 講演





「糖尿病と腎症の関係」
  ─糖尿病と腎疾患の食事療法について─
   (株)三和科学研究所 ニュートリション事業部
           プロダクトグループ長    飯 田 貴 史


「ここまでわかった目の病気」
  −加齢黄斑変性症、緑内障等−
    札幌医科大学   眼科学 教授 大 黒   浩









  糖尿病と腎症の関係
    ─糖尿病と腎疾患の食事療法について─


(株)三和科学研究所 ニュートリション事業部
プロダクトグループ長    飯田 貴史

『 糖尿病人口1620万 人』
糖尿病人口は740万人、境界型など疑わしい人は880万人 で合わせると1620万人にもなり、2004年では透析に移行 したのは慢性腎症で約1/4、腎疾患の半分位は糖尿病が原因 であった。 空腹時血糖値が高いとか低いで死亡率の変化は あまりないが、食後2時間血糖値(OGTT2時間値)が高い 人の死亡率が多いことで糖尿病の診断ができる。その理由は 10年程前からOGTT2時間値が140mg/dlを超えてきて発症 2年程前からは急激に高くなる傾向にある。 このことから早期に食事療法、運動療法などをしっかりして いく必要がある。

『 増え続ける糖尿病性腎症 』
 糖尿病の合併症は糖化による変性(グリケーション)により細小血管症がおこり網膜症・腎症・神経障害がひきおこる。Hba1cはヘモグロビンとブドウ糖がグリケーションしたもので血糖値の上昇や合併症を判断する指標となる。慢性腎不全のうち糖尿病が原因疾患である糖尿病性腎症は年々増加しており、透析導入患者の半分を占めている。糖尿病性腎症の初期は自覚症状がないが、血液検査により微量アルブミンが検出されればこの時期から血圧は上昇するため血糖コントロール、低蛋白、塩分制限など基本的な食事療法をしなければならない。腎臓は一度悪くなると元に戻らないことからも早期発見、早期治療で腎疾患の進行を遅らせなければならない。糖尿病性腎症は慢性糸球体腎炎に比べ血清クレアチニン濃度が短期間で上昇する特徴がある。

『 メタボリックシンドロームと新診断基準 』
 メタボリックシンドロームの予防として平成20年4月から特定健診・保健指導が導入される。今までの「高脂血症」の名称を「脂質異常症」と改め、総コレステロール値を予防や診療の基準とするのをやめHDL・LDLコレステロール値を設定するなど新しい診断基準が盛り込まれている。栄養士が指導するにあたっては @血液検査値を読み取ること A相手に行動変容が出来るように指導することが求められる。
 糖尿病の治療は食事、運動、最後に薬だが、食物繊維を摂取することで肥満の予防、血圧低下、腸内細菌の改善がみられる。整腸作用や加齢に伴い有害菌が増えることからも食物繊維摂取で腸内の活性化をすることもメタボリックシンドローム対策につながる。



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「ここまでわかった目の病気」
−加齢黄斑変性症、緑内障等−

札 幌医科大学
眼科学 教授 大黒 浩

『 早期発見が鍵〜眼の病気〜 』
 失明原因の主要疾患の第1位は糖尿病網膜症であるが、白内障・緑内障・加齢黄斑変性も失明原因の非常に重要な疾患である。白内障は60歳以上の方はほとんど罹患しているといわれている。
世界では7000万人の緑内障患者がいるといわれている。最近では、失明対策上非常に重要な疾患である加齢黄斑変性症という病気がわかってきて、高齢化によってどんどん増えてきている。これらの疾患はきちんと早期診断して、治療すれば何とかなる病気である。

〜白内障〜
 白内障は水晶体が濁る病気である。原因は加齢・外傷・糖尿病・薬剤性・アトピー・遺伝が挙げられる。治療は薬物療法があるが、濁ってしまったものを、透明にすることはできない。 最も有効な方法は手術である。2〜3mm程度の小さな傷で行う、高度な小切開白内障手術が行われている。自己閉鎖するので縫合の必要がなく、ゆがみがでない(=乱視がほとんどでない)利点がある。手術時間は20分程度で、日帰りか数日の入院期間で退院できる。ほとんどの場合、次の日から視力が回復する。

〜緑内障〜
 緑内障は目の画像を脳に伝える神経が障害される病気である。白内障と違い、治らない病気である。原因は高い眼圧が視神経を損傷させることにある。しかし、眼圧が正常であっても、元々視神経が弱っていれば緑内障になる。知らないうちにどんどん進行している可能性があり、気づいたときにはかなり視野が狭くなっている場合もある。そうならないためにも、早期発見が重要であり、定期的に検診を受けることが大切になってくる。
危険因子は眼圧が高い・高齢者・近視・家族歴・糖尿病 高血圧・片頭痛が挙げられる。
治療は目薬や手術によって眼圧を下げる方法がある。
以前は、30人に1人が緑内障といわれていたが、最近 は20人に1人といわれており、子供の緑内障も増えて きている。

〜カシスの研究〜
 大黒教授の研究グループではカシスの色素成分であるアントシアニンについての研究が行わ れており、視神経乳頭血流の改善効果がみられた。緑内障患者に対するサプリメントとして有用であるとのことであった。


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