▼「発酵食品はなぜ体に良いのか」

<発酵食品とは>
19世紀にパスツ−ルやブフナ−などによって、発酵が微生物によって起こることが発見された。現代では発酵は「微生物の持つ機能を広く物質生産に応用して、人間にとって有益に利用すること」と定義されている。発酵食品は微生物又は微生物から取りだした酵素の働きで作られる。又、腐敗と違い人間が食べておいしいと感じ食中毒を起こさない。酒(アルコ−ル発酵)キムチ(乳酸発酵)酢(酢酸発酵)うまみ調味料(アミノ酸発酵・核酸発酵)などがある。食べる人によっては嫌悪感を持つという意味で、納豆やくさやは発酵と腐敗の両方で作られる食品であるが、PHの上昇により有害な微生物が死に絶え、食品としては安全な物である。

<体に良いということは>
・病気を治す、あるいは防ぐ最も具体的だが医薬品の領域であり、食品としては表現しにくい
・健康増進・維持に役立つ
  医薬品と食品の境界領域であり、多くのいわゆる健康食品がここに属する。
・気持ちが楽しくなる・楽になる
  今後重要になる可能性がある。例えば精神安定作用があるギャバなどがある。

いずれの効果についてもヒトで十分な数の化学的裏付けデ−タが得られていることが大切であるが、実際には食品については動物試験や細胞試験レベルでしか確認されていないことが多い。

<機能性物質>
 食品には(1)栄養(2)おいしさ(3)生体調節機能という三つの機能があり(3)に関与するのが機能性物質である。発酵によってできる機能性物質にはペプチド(抗酸化・代謝促進)オリゴ糖(抗齲菌・免疫附活)ビタミンB・C・D・K(抗酸化・血液凝固促進)ヒアルロン酸(皮膚新生)ギャバ(精神安定)などがある。フラノンという香気成分でありながら 抗酸化活性・抗腫瘍活性を持つ物質もある。

<食品が健康に資する仕組み>
・機能性成分が直接機能を発揮する
 脂肪燃焼物質によるカロリ−消費支援、抗腫瘍化物質によるDNA損傷防止など
・機能性成分が障害因子を制御する
 ACE阻害活性による血管収縮の抑制・血栓防止、抗酸化物質による生体物質の過酸化の抑制・阻害など
・機能性因子が障害因子を排除する
 食物繊維による腸管内の悪玉菌や不要物の徐去、利尿作用物質による老廃物の排出など
・良性微生物が病原菌などと拮抗する
 プロバイオティクスによる免疫力の附活、腸管親和乳酸菌による悪玉菌の排除など

 発酵食品には、機能性成分が原料由来のものと発酵によって生成したものとで、複合的に含まれている。それらの持つ望ましい効果によって発酵食品は健康に良いと考えられる。




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▼「腸の働きと免疫」

 腸とは、消化管の胃と肛門の間の部分で、最も重要な役目である食物の消化、栄養素の吸収を行っている。さらに腸は、生体の恒常性を保つ免疫系としての役割も担っている。

<腸の機能>
食物を吸収しやすいように分解し、それを吸収したり、消化液を分泌する。消化には、二種類あり、一つは小腸吸収細胞の管腔側の膜に存在する消化酵素によって加水分解する膜消化であり、もう一つは食物の破砕、消化液との混合を行う機械的・物理的消化である。
 消化された食物は、小腸壁を輸送される。水溶性栄養素であるグルコース、アミノ酸は、ナトリウムと共に吸収され、血管に送られ、肝臓へ輸送される。脂肪は、胆汁の作用により、ミセル化(乳化)され、小腸壁で再び合成され、リンパ系へ入る。
 小腸は、生体として機能している時は、約2mに収縮している。腸管の内側の粘膜には輪状のひだがあり、多数の絨毛でおおわれ、さらに、その先端には微絨毛がある。 これらの構造により、粘膜の表面積は、テニスコート一面分に相当する。
また、消化活動を活発にするために、蠕動運動・分節運動が繰り返し行われ、粘膜面と、 よく接触することになり、栄養素は効率よく吸収される。

<腸の免疫>
 腸では、口から進入する異物(栄養素・水・電解質・食物繊維・細菌・ウィルス・金属・薬など)を身体に必要か、害を及ぼすかを区別し、吸収・排除を行っている。身体にとって異物であるもの(抗原)が体内に入った時、それに対抗する物質(抗体)を作り、抗原を排除するシステムを免疫反応という。
自己と非自己を見極める事が、免疫の役割である。これらの反応は、抗原に対して適切に機能すれば生体防御となる。しかし過剰に反応した場合、アレルギ−となる。生きるためにとる食物も異物として体内に入るが、体に必要な栄養だけを取り込むため、免疫応答は、起こらない。この様に人体に対して、無害なもの、有益なものには、免疫が働かなくなる現象を免疫的寛容という。腸管の免疫の働きには、身体中の粘膜(気道、目など)の免疫に直接、影響を及ぼしている。

<免疫反応の基本>
 腸管の粘膜表面をおおう粘液中には、抗体が多く存在する。そこに抗原(外的)が侵入した場合、マクロファ−ジ(人間の体の掃除屋)が抗原提示細胞となり、抗原情報を提示する。天然の抗原物質となるものに、タンパク質(動植物の酵素・ウィルス・細菌毒素など)多糖類(血液型物質)、脂質(グラム陰性桿細胞壁)、核酸がある。
粘膜付属リンパ組織であるパイエル板からは、細胞が手をだし、抗原をキャッチし、免疫反応を起こす。パイエル板は、粘膜免疫の司令塔の役割を果たしている。局所で作られたIgAは、粘膜面をおおうように防御する。パイエル板内に存在するDCが、その中枢的役割を行っている。


<アレルギ−>
免疫反応が極端に起こり、病的な状態で、その症状により、I〜IV型の四つに分類される 食物アレルギ−は、主にI型とIV型である。I型は即時型で事前に差し出されたアレルゲンに反応するIgE抗体が抗原と免疫反応を生じることで起きる。
V型は、遅延型である。
アレルギ−を起こさせないためには、免疫的寛容を導くことが大事であり、栄養をどのように適切に摂取するかが重要である。




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