平成20年度 秋期研修会



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「食と免疫と健康」

講師 北海道大学 遺伝子病制御研究所 免疫制御分野
教 授  西 村 孝 司

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  タイトルは「食と免疫と健康」だが、最終的には「健康でワイルドな子育て」が、地域活性化の原点であり、社会貢献という意味では栄養士の力が重要であると考えている。
 現代では免疫バランスが崩れてきているが、免疫バランスの原点はやはり食育教育であり、  その背景には、環境破壊や地球温暖化も原因であると考える。
アレルギー、感染症、抵抗力の弱い子供の増加などは、免疫バランスの異常と体内環境 (神経・免疫・内分泌)の悪化で、このひとつが狂っても必ず病気になってしまう。 昔と今の生活環境も違い、現代では自然の中で遊ぶ機会が少なくなり、自然からたくさん の事を学んできた昔とはずいぶん違う。地域のつながりや家族のつながりも薄い。
食事の形態もさまざまに変化してきた。そういったことが、どんどん体内環境が変化して きた理由である。このことを考えても、子育ての原点は食であるといえる。
 免疫(司令塔であるヘルパーT細胞とバイ菌を食べるキラー細胞)はバイ菌(ウイルス) を食べ、体を守っている。人間はウイルスに感染してもらい、免疫力を蓄えてきたが、抗 生物質の開発などで、ウイルスとの共生を断ち切り、ウイルスは生きるために司令塔のヘ ルパーT細胞に感染する。その為、抗生物質の効かないHIVなどが出来たと考えられる。
HIVが恐れられるのは免疫不全だからである。免疫はバイ菌を食べて掃除する。これが自 然免疫。1つのバイ菌に対抗できるようなアンテナを持ったリンパ球は1個しかなく、そ れを免疫調節因子の増殖因子で0歳から5歳までの間に1万個に増やし、さらに予防注射 を打った際にさらに1万個の増殖因子がいっぺんに増えていく。それが免疫記憶であり、 多ければ多いほど免疫力は強くなる。 しかし、今の子供たちは免疫ができにくく、その 結果集団感染などが起こりやすい。
講演の様子  最近の子育て環境や食事の変化は、精神的バランスや体内環境をおかしくする事に繋がっ ている。体内環境の改善はとても大事である。 子育て環境、生活様式の変化、大気汚染などの環境の悪化、ストレスの増加、バイ菌との共生 がなくなるなどは、神経と免疫、内分泌のそれぞれからなる体内環境の悪化が生活習慣病など の増加に繋がり、それが社会問題となっている。 病気の予防は普段の食事がいかに大切か、栄養士の力が試される時が来ている。