第9セッション
演題 4
戦後北海道開拓農民の栄養改善事業における
地域保健ワーカーの活動の特徴 -S地域での事例-
発表者 ○長谷部 幸子
(名寄市立大学)
【目的】戦後復興期の北海道においては、道外からやってきた開拓者たちが農業や牧畜を営めるように努力を重ねてきたが、人々の栄養状態は悪く、栄養改善は大きな課題の一つであった。戦後、農村社会開発部門において複数の省にまたがって取り組まれた事業の中で「栄養改善(食生活改善)」のために行った地域保健ワーカーの活動の特徴を明らかにし、国際的な農村社会開発の現場にどのように活かすことができるかを考察する。【方法】戦後開拓、農村開発、生活改善、栄養改善などに関する手記や報告書などの文献を収集し、当時の社会背景を明らかにしたうえで、住民の栄養改善に大きくかかわったと捉えられた保健所栄養士、生活改良普及員、開拓保健婦の活動に焦点を絞り、データを抽出し分析を行った。次に、多職種が連携して活動を行ったとの記述があったS地域について文献を収集し、栄養改善に関わる活動についてデータを抽出して分析を行った。また、当時の保健所栄養士に半構造的インタビューを実施し分析を行った。【結果】厳しい自然条件の中、どの保健ワーカーも職務に必要な技術をもち、高い意識と行動力をもって、自らが地域に出ていき、住民との信頼関係構築に努めて活動を行った。日常生活にある多種多様な問題に住民自身が気づき問題解決につなげていくような支援をする、住民のよき相談相手になる、活動例を紹介する、実績報告をコンテストなどに推薦する、女性のグループ化に取り組むなど、さまざまなファシリテーション機能を備えた活動を行った。また、保健所栄養士は各ワーカーの栄養改善に関する活動においてアドバイザーの役割を果たした。【考察】栄養改善に必要な技術をもち、ファシリテーション機能を備えた活動を行った地域保健ワーカーのための研修制度、支援体制づくりなどの日本の経験は、国際的な農村社会開発の現場に活かすことができるのではないかと考えられた。
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