第7セッション
演題 2
青年の自立期における環境変化と栄養摂取動態に関する研究
発表者 ○松井勇祐、河口明人
(北海道大学教育学部)
【目的】青年期において人は自我の確立とともに大きな生活環境と行動の変容を経験するが、その中で最も象徴的なものが大学入学による居住形態の変化である。青年の自立期における環境変化、特に一人暮らしに伴う栄養摂取状態の変容を分析することにより、現代の青年の生活行動と食生活上の課題について考察する。【方法】(1)北海道大学在学中の学生を対象に、BDHQ(簡易型自記式食事歴法質問票)を用いた食物摂取頻度調査を行い、そのデータを居住形態(実家・一人暮らし)別に分類してその差を分析した。(2)また、新入生を対象に、4月期・7月期に食物頻度調査を行い、4月から7月までの栄養素摂取量の変化を居住形態別に分類して分析した。【結果】(1)の調査において、一人暮らし群のたんぱく質・脂質・炭水化物(PFC)比は実家群に比べP・F比が有意に低くC比が有意に高い結果を示し、また、脂質に関して、1000kcalあたりの各脂質、脂肪酸の値は一人暮らし群に比べ実家群の方が有意に高い結果を示したが、飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸・多価不飽和脂肪酸(SMP)比は実家群が高いが有意差がなく、逆にn-6/n-3比は一人暮らし群で有意に高い結果を示した。また、(2)の4月から7月までの新入生の栄養素摂取量の変化において、有意ではないが一人暮らし群がP・Fの減少とCの増加を示した。【考察】親元を離れ一人暮らしをする学生は、実家で暮らす学生に比べてPFC比が炭水化物へ偏る傾向と、n-3系脂肪酸の摂取比が低くなる傾向が明らかになった。また新入生において、実家での影響が残る4月期から一人暮らしの食習慣が確立する7月期にかけて、PFC比が炭水化物中心へ移行していることが明らかになった。居住形態の違いによる栄養摂取動態の差は個人の食行動がまだ確立されていないためであり、このことから、居住形態の変化に伴う食行動の自立が現代の青年の自立期における課題である。
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