第1セッション
演題 3
褥瘡治癒の過程における、栄養改善の影響
発表者 ○谷口文恵1)、田中恭子1)、引地和佳子1)、小山美樹1)、野村稚里1)、星昌枝2)、大岩彰3)
(医療法人愛全会 愛全病院栄養科1)・看護部2)・診療部3)
【目的】高齢者の低栄養状態は、たんぱく質とエネルギーの両方が不足している事が多い。エネルギー不足は体重が減少し、病的骨突出を誘発する。さらに、血中たんぱく質の低下により、筋肉量の減少を加速させる。低栄養状態が進むと、皮膚や皮下の細胞組織の圧力、ズレ力に対する耐久性が低下する為、褥瘡が発生しやすくなり、また難治性となる。栄養状態の改善が褥瘡治癒過程に、好影響を及ぼした3例を経験したので報告する。【方法】褥瘡26例(期間H20.1〜H20.8)の中で、栄養状態が改善し、良好な結果が得られた3例を抽出し、それらの摂取栄養量、栄養補給の方法、体重・BMIの変化、血液生化学検査値(Alb、Hb、RBC)と創の状態の推移を報告する。【症例および結果】症例1:71才男性。仙骨部に褥瘡発生し、経管栄養にサプリメント補助食品を付加した。その結果、Hbが12.5g/dlから14.3g/dlに改善し、創部は縮小した。症例2:76才女性。坐骨部に褥瘡を有し入院し、経口摂取量に応じて、経鼻栄養と輸液を併用した。その結果、BMIは14.2から17.3に、Albは2.9g/dlから3.2 g/dlに、RBCは256104/μlから30804/μlに増加し、創部は縮小した。
症例3:64才男性。仙骨部に褥瘡発生し、経管栄養を半固形栄養剤に変更し、エネルギーアップした。その結果、BMIが16.3から21.5、Albが3.3g/dlから3.9g/dlと改善し、褥瘡は治癒した。【考察】必要栄養量を充分に確保する事で、栄養状態が良好に推移し、体重の維持・増加、血液生化学検査値が正常または正常に近づき、創の状態も改善を認めた。褥瘡治癒の過程では、基礎疾患、全身状態、栄養状態、環境やケアの方法が複合的に関連している。特に栄養状態の改善は免疫力を高め、褥瘡治癒に不可欠である事が再認識された。食事摂取状況の把握を含む、定期的な栄養アセスメントと多職種からの情報により、高齢者を低栄養状態にさせず、早期の栄養介入が褥瘡治癒の過程において重要であると考えられた。
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