第9セッション
演題 1
栄養ケアマネジメントの出発点としての食材下処理法の検討
流水曝露冷却法vsクックチル法
発表者 ○坂本知美、坂田葉子、佐藤節子
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科)
【目的】ヘルスケア施設での栄養ケアマネジメントの実施、および食育基本法施行を機に栄養管理の出発点であるフードサービスの下処理工程の問題点、すなわち現行の流水曝露冷却法における栄養素と食味の減少が指摘されている。本研究では検討例を増やし、どの程度の問題が存在するかを、クックチルシステムでの下処理法と比較・検討した。
【対象と方法】治療食の食材として使用される野菜、水産加工品の中から6種類を選び、小松菜、白菜等は切り、小エビは解凍しいずれも茹でてザルにとったのち3分割し、@水道水を放出して食品を直にさらす流水曝露冷却法、A低酸素包装によるパックチル冷却法、B空冷によるブラストチル冷却法でそれぞれ60分間処理した。それらを1〜2日間3℃の冷蔵庫で保管した後、5段階評価による食味試験とビタミンC残存量試験(小エビを除き3回実施)に供した。5段階評価では、最良を5、最低を1としスコア化した。
【結果と考察】食味試験の評価スコアは流水曝露冷却法2.24±0.79、クックチル法4.02±0.50と顕著な差が得られた(p<0.001)。試食者の意見では、流水曝露冷却法に対し「味がない」「水っぽい」等の否定的なものが多く、クックチル法では「甘みがある」「香りがする」等の肯定的なものが多かった。ビタミンC残存量においても前者は平均8.2mg、後者は平均17.8mgと顕著な差があった(p<0.001)。これにより現行の流水曝露冷却法におけるビタミンCの多大な栄養素損失が明らかとなったとともに、クックチルシステムを用いての改善が可能であることが示された。流水曝露冷却法が慣習化された背景には、わが国の国土に急流が多く給食に利用できる清潔な水が豊富であったことが考えられる。しかし、栄養ケアマネジメントの実施及び食育基本法施行を機に、栄養管理の出発点であるフードサービスにおけるこのような問題点への具体的な取組みも必要である。
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