第9セッション
演題 4
玉葱残渣を利用したレトルト食品の摂取における
腸内環境への影響
発表者 ○小川ひとみ、南田公子、柏谷茂典*、冨田房男、浅野行蔵
(北海道大学大学院農学研究科応用菌学、グリーンズ北見*)
【目的】(株)グリーンズ北見のオニオンスープの製造過程では大量の搾りかす(玉葱残渣)が残る。玉葱はフラクトオリゴ糖やイヌリンなどのフラクタンが多く含まれ、これらはBifidobacteriaなどの有用な腸内細菌を選択的に増殖させ、腸内環境を改善することが知られている。そこで本研究では、残渣を利用したレトルト食品の摂取によりヒトの腸内環境への影響を調べた。
【方法】被験者14人(男6女8, 21-26歳)に毎日玉葱残渣160 g(玉葱約1個分200 gの80%)を含むレトルト食品を2週間連続で摂取してもらい、その他の食事は自由とした。被験者には排便回数や量に関するアンケートを摂取前と摂取中記入してもらい、糞便の採取は摂取前、摂取1, 2週後、摂取後2週後の計4回してもらった。糞便から培養可能な菌の総菌数・Bifidobacteriaの生菌数(BL・BS培地で嫌気培養)、pH、短鎖脂肪酸量(HPLC)とDNAを抽出してDenaturing Gradient Gel Electrophoresis(DGGE)により腸内細菌叢の変化を調べた。また残渣中のフラクタンも定量した(Fructan Assay Kit)。
【結果・考察】摂取した残渣のフラクタン含量は0.75% (1.2 g/残渣160 g中)だった。摂取前に比べ、摂取により多くの被験者で糞便の色・状態ともに良い方へと変化した。便秘の被験者は排便回数や量も増えて便秘の改善が見られた。Bifidobacteriaの生菌数が摂取2週後で有意に増加し(p=0.03)、 特に摂取前に108 cfu/g fecesだった3人の被験者が109程度に増えた。DGGEでは、半数近くの被験者でEubacterium eligens, Fusobacterium prausnitzii, Uncultured firmicuteとそれぞれ最も高い相同性を示す3つのバンドが、摂取により濃くなった。以上のことから、玉葱残渣を利用したレトルト食品の摂取により腸内環境の改善が見られることがわかった。
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