第8セッション演題 3

調理過程における気分の変化

発表者 ○橋爪亜希子、安田直美、石澤恵美子、坂本恵、侘美靖 (北海道文教大学)
【目的】 調理過程における気分や感情の変化は,作業の安全性や効率だけでなく料理 のできばえにも影響すると考えられる。我々は作業環境改善のための基礎資料を得る ため,気分状態を示す心理指標の経時変化を検討した。
【方法】

調査対象は、北海道内B短大付属の調理師養成課程に在籍する女子学生14 名であった。気分調査は橋本ら(1996)が身体活動中の気分測定のために開発し た10項目の質問からなるMood Check List‐Short Form(MCL‐S・1)を用い、 「快感情」 「リラックス感」 「不安感」の各得点を算出した。測定は平成15年6月 10日および17日の2回で,1回6時間(8:00〜14:00)の実習のうち(1) 調理直前,(2)調理中,(3)調理後の食事提供後,(4)作業終了30分後の4時点で行なっ た。統計処理は一元配置分散分析およびFisherの多重比較検定を行ない,有意水準 をP<0.05とした。

【結果】
初回(6月10日)実習の「快感情」得点は調理直前に比べて調理中に有意に上 昇したが、食事提供後に下降した。 「リラックス感」得点は調理直前から食事提供後まで 有意な変化は認められなったが,作業終了後に有意に上昇していた。 「不安感」得点は時 間経過とともに低下する傾向にあり,調理直前および調理中に比べて食事提供後と作業終 了後に有意に低下していた。2回目実習(6月17日)の「快感情」得点は調理中に高ま ったまま、作業終了後まで大きな変化は認められなかった。 「リラックス感」得点および 「不安感」得点は初回実習と同様の結果であった。以上の結果から,調理作業中に快感情 が高まり不安感も低下する傾向が認められるもののリラックス感上昇は伴わず,安全や衛 生面への気配りによる緊張状態が続いていると推察される。作業途中での計画的な気分転 換の必要性が示唆された。
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