第3セッション演題3

第6次改定日本人の栄養所要量による栄養素充足確率の
栄養教育への適用

発表者

 岡崎 眞(東京農業大学)

【目的】

 栄養教育を行うにあたり、個々人に栄養素の摂取推奨量を具体的に示すことは、栄養教育を実際の食生活に反映させるために極めて重要である。しかし、個々人の健康維持のための必要量を知ることは、栄養教育の現場では、特殊な場合を除いて、現実的に不可能である。そこで、栄養所要量を参考にして推奨量を決定することになるが、第6次改定で明確にされたように、所要量は必要量の個人差を考慮して策定された値であるので、そのままでは適用できない。この研究は、所要量に考慮されている個人差の分布により、個人に摂取推奨量を示す際に起きる矛盾をできうる限り少なくして、栄養教育に対する受容度を向上し、その効果を高め、個々人にあったテイラードダイエットを実現しようとするものである。

【方法】

 第6次改定所要量のなかで、必要量の分布を数量化しうるものを明らかにした。必要量の個人差の分布が明確に示されているたんぱく質とカルシウムを取り上げて、必要量の充足確率を求める際に考慮すべきことを検討し、さらにそれを視覚的に表現することを試みた。

【結果】

 たんぱく質、鉄、カルシウムなどは、充足確率を求めることの妥当性が支持されるが、ビタミンCのようになじまないものがあることが明らかになった。また所要量算出の根拠となる体重について、現体重か理想体重、どちらによるべきかということが問題となる。
 充足確率については、すでに降水確率という用語が一般に用いられており、それとの関連で説明することにより、対象に受容されうるものと考えられる。この方法は従来行われてきた所要量を、あたかも個々人の必要量であるかのように用いる方法よりも、所要量策定の概念に沿った、科学的に根拠のある実証的な方法であり、テイラードダイエットを実現する有力な手段となり得る。