第2セッション演題4

血清コレステロール値220mg/dlは基準上限値か?

発表者 ○村松 宰(北大・医療短大)、上田文子、杉村留美子、笹谷美恵子(藤女子大・食物栄養学科)
【目的】

 高血圧などの他の危険因子がない成人の血清コレステロール値(ch値)の基準上限値は220mg/dlとされてきた。一時期240 mg/dlを用いたが最近、また動脈硬化症学会の方針により220mg/dlに戻すことになっている。この基準上限値は以前より過剰評価という論議がある。そこで今回は23万人の健常者を対象として性別年代別基準範囲を設定し以下の点を提唱したい。

【方法】

 1)対象・・・過去5年間の献血を行った道内にすむ健常者23万人。
 2)解析方法・・・ch値の分布は厳密には正規分布ではないので性別年代別にBox-Coxの変換公式により正規化し95%信頼区間を求めた。年代によっては変換公式によっても正規化できない分布については97.5%タイルを上限値とした。

【成績】

 110代、20代のch値の基準設定値は平均値及び上限値とも現在用いられている基準値の範囲内にあり問題はない。
 2
)しかしながら30代以上になると男女とも上限値が上昇し基準上限値は220mg/dlを越える。さらに50代、60代では基準値は意味をなさなくなり、特に50代以上の女子ではch値の基準値の中央値が255mg/dlであり殆どの健常人が指導対象となる。

【考察・結論】

 1)若年者を除けば220mg/dlの上限値はいわゆる擬陽性者を増やす過剰評価となる基準値である。もちろん他のTGなどの血清脂質や高血圧などの危険因子を持っているかどうかによって基準値の適用は異なるがこれらの因子がない健常人の場合は厳しい基準といえるであろう。現在の性、年齢を考慮しない基準値ではなく、早急に年代別の基準設定して、過剰な評価を避けるべきと考える。