演題 10 旭川市民の食と健康に関する調査
             〜職業別食意識の差異について〜
         (旭川市保健所健康推進課)藪たか子 ○新屋奈緒子 岸本理絵 三輪祐美子 
                                  竹内奈保子 大熊恵美 
       (旭川大学女子短期大学部)若杉人美
【目的】

 旭川市の食生活を中心とする生活習慣,外食や加工食品の栄養表示に対するニーズ,食事に対する意識の実態を把握し,健康づくり事業に反映させる基礎資料とすることを目的に行った。
【方法】







 旭川市民のうち20歳代から70歳代までの女性2,000名を調査対象とし,住民基本台帳を使用し無作為抽出で行った。また,年代による差が生じないように,10歳刻みに各年齢区分の人口を拾い出し,その割合に応じた各年齢区分ごとの対象者を決定した。被調査対象者にアンケートを送付し,記入終了後,返信用封筒で返信してもらった。また,一部は保健所栄養士並びに食生活改善推進員が回収を行った。アンケートを送付した者の内,回答があったものは1,054名(回収率52.7%)。
 そのうち有効回答は1,051名(回収率52.6%),職業別分類における有効回答は1,035名(回収率51.8%)であった。
 今回は職業と食及び健康に対する意識の関係を比較した。有意差の検定はカイ2乗検定を用いた。
【結果】



















 調査客体を専業主婦(無職を含む),パート,常勤,自営業,その他に分類して各々の傾向を見た。
 (1)体型については,自営業の肥満が27.1%と目立ち,やせはいない。一方,常勤におけるやせの割合が16.5%と高く,就業形態における体型に有意差が認められた。
 (2)体の調子については,専業主婦,自営業は「健康に不安がある」「持病あり」が約30%と高い。一方,常勤は「非常に健康である」「健康である」が半数近くとなっており,職業における体調についても有意差が認められた。
 (3)食生活改善意欲については,「改善したい」が常勤52.5%と最も高く,次いで自営業48.4%と続く。食生活が乱れやすい傾向にあるからこそ,問題意識があり,改善意欲に繋がっているのではないかと思われた。
 (4)外食利用頻度については,常勤では1ヶ月に4〜5回以上が45%を超え高いが,外食頻度の改善意欲においても,20.4%と高くなっており,外食頻度は高いが何とかしたいと考えていることが伺え,有意差も認められた。
 (5)朝食の摂食状況については,常勤の「毎日食べている」が66.3%と,他の職業が約80%ある中,低い結果となった。就業形態における有意差が認められた。
 (6)料理を作る頻度については,常勤の「あまり作らない」「ほとんど作らない」「作らない」を合わせると約22%となり,他の職業と比較しても高い。ただし,料理を作ることは「どちらかというと嫌い」「嫌い」を合わせても10%強で,他の職業と比較しても高くはなく,作りたくないので作らないのではなく,物理的に作れないことが伺える。
 (7)料理を作る際に優先させていることについては,「家族の健康」は常勤以外の職業は60%を超えているが,常勤は48.9%と低い。また,「家族の嗜好」も常勤以外の職業は約50%となっているが,常勤は40.2%と低くなる。一方で,「時間がかからないもの」は常勤と自営業が35%を超えており,特に常勤については時間がなく,健康や嗜好よりも短時間に料理を作るよう考えていることが伺える。
【考察】






 職業により,生活スタイルに違いが生じ,その結果,食生活における問題点にも差異が生じていることがわかった。常勤においては,外食の利用頻度が高く,朝食の欠食についても多い。常勤者は就業による時間のなさから食生活がおろそかになってしまうことが問題となる。このように,職業によって食生活の問題点は違うことからも,行政としての今後の活動は,それぞれの職業を考慮した時間設定,内容での展開をし,改善意欲のある者に効果的な指導をしていく必要を感じた。特に,現在の栄養士活動においては,平日の教室など,専業主婦を対象とした時間,日程設定がほとんどであり,改善意欲が高かった常勤なども参加しやすい設定により,旭川市民全体の健康意識が高くなるよう取り組んでいきたい。