栄養士のつぶやき No.48

「ニシパの恋人」

日高支部 医療協議会 平取町国民健康保険病院
津川 陵子

 私の勤めている町、平取町は、人口5300人程の小さな町です。小さな町なので、「平取町から来ました」と言っても「どこ?」と首を傾げられる方が多いですが、「トマトで有名な…」と付け加えると「あ~あの…」とわかってくださる方もかなりの確率でいてくれます。わが町のとっておき自慢、トマトの紹介をします。平取町を車で走ると、両側にビニールハウスが何棟も見えてきます。そのほとんどが、トマト栽培のハウスです。大玉トマト栽培で北海道の4割を占める、北海道一の出荷量を誇っている訳ですから、ずらりとハウスが並んでいる光景は圧巻です。栽培面積は、100ヘクタール以上だそうです(札幌ドーム何個分なのかしら…)。

平取町がそこまで、トマト栽培が盛んになったのは、栽培に適した環境にあることが理由なようです。トマトはもともと暑さと湿気が苦手な作物で、本州のジメジメとした夏は新陳代謝が悪くなり、味が悪くなってしまうそうです。人間と同じなんですね。そこで、夏は涼しく湿度が低い北海道はトマトの味を引き立ててくれ、なかでも日高山脈を源とした沙流川沿いに広がる平取町の冷涼な気候が最適なのだそうです(近年は、ここは北海道かしら?という暑さもありますが…)。

「びらとりトマト」がここまで、知名度を上げたのは最適な地域だったからだけではありません。冬のうちに始まる苗づくりから収穫まで、管理の仕方により生育、味が大きく変わり、とても手間のかかる作業だそうです。その間、生産者さんは休むことなく様々な作業に追われます。1件当たりの栽培面積も大きいので、トマトにかかる忙しさは大変なものです。それでも、「トマトにストレスがなく育つように、お手伝いをして、その恩恵を頂いている」という気持ちで、生産者さんは日々心を込めて栽培しています。その姿は、頭の下がる思いです。

「ニシパの恋人」とは、トマトやその加工品をブランド化した名称です。ニシパとは、アイヌ語で紳士・旦那・金持ちをあらわします。ニシパが健康な体を保つために真っ赤に熟れたトマトを毎日食べて、恋人のように愛してしまったと言うストーリーから、平取町のトマトに関わる商品はこの「ニシパの恋人」とネーミングされています。ニシパに愛された、トマトはもちろんその加工品も美味しいものが沢山あります。トマトジュース…トマトカレー…珍しいところでは赤くなる前に収穫したトマトを使った青いトマトジャム!是非一度ご賞味下さい。


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